酔っぱライタードットコム - おやじ飲みツアー/いなむらや

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いなむらや

東京都中央区銀座8--7-18かなめやビル4階
TEL 03-5568-5543



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新橋から歩いてすぐの銀座8丁目。雑居ビルの4階に、気持ちの良いバーがある。マスター1人、カウンター11席だけの小さな店だ。ドアを開けると「いらっしゃいませ!」と笑顔で声をかけてくれる。それだけで、仕事の憂さが晴れ、ふっと気持ちが明るくなる。

とりあえず生ビールをたのむ。この日はレーベンブロイだったが、ビールは季節によって変わる。マスターは泡にこだわり三度注ぎをするので、ちょっと時間はかかるが、きめ細かいクリーミーな泡をたたえたビールが目の前に。喉を鳴らして飲めば、昼間の疲れも吹き飛んでいく。

マスター手作りのつまみは、焼き銀杏、じゃこ天、水餃子など。低く流れるBGMはジャズだ。2杯目は角瓶のハイボール。「いろいろ試しましたが、ウィルキンソンの炭酸が一番ですね」と控えめに語るマスター。時おり酒に対するこだわりが見え隠れするが、けっして押しつけがましくはない。

高校時代からバーテンダーにあこがれ、アルバイトをしていた。しかし、その店のマスターが、「バーなんていつでもできるから、広く社会を見た方がいい」と言ってくれたので、大学へ行き、社会人になってから、脱サラしてこの世界に入った。

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「サラリーマンはやって良かったですね。バーのお客さんはほとんどがサラリーマンなので、お客さんの気持ちが少しでもわかるようになったかなと」

バーテンダーになってからは、休みもお金もなく、あるのはハングリー精神のみ。「オレはついてる。お金を払わずに、お金をもらって勉強できるんだから」とあくまでも気持ちは前向き。時にはお客さんに叱られながら、10年間修行の日々を過ごした。

自分の店を持って丸5年というマスターのモットーは、「話し上手より聞き上手」。たしかにマスターならなんでも話をきいてくれそう。ある時は憂い、ある時は華やぎ、人生のさまざまな思いを、さりげなく受け止めてくれる。「いなむらや」はそんな店だ。

「ショートカクテルで、度数高めで、サッパリめ」という私のアバウトなオーダーに、マスターが作ってくれたのは、XYZだった。ラムベースにコアントローを入れて。レモンジュースはフレッシュで搾りたてだ。旨い!

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こうなったら、最後はバーテンダーの性格が最も出ると言われるマティーニをオーダー。すると、いつものタンカレーではなく、私のために37度のゴードンをチョイス。しかも、ベルモットの代わりにシェリーのティオペペを使うという変化球できた。これはめちゃくちゃドライ! でも旨味がある辛口だ。

この日はお客さんの少ない時間を狙って、開店早々に行ったのだが、11時頃にはマスターもお客さんと一緒になって飲むらしい。それはそれで楽しそうだ。今度は遅い時間に来てみようか。

「店が小さいので、来るときは必ず電話してくださいね」とマスターはどこまでも笑顔で腰が低く、「ありがとうございました」と深々と頭を下げるのだった。

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