酔っぱライタードットコム - おやじ飲みツアー/脱藩酒亭

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脱藩酒亭

東京都港区新橋2-9-17 TEL03-3504-1029



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新橋烏森神社の境内に入り、社殿の脇にある裏道に、ひっそりとたたずむ立ち呑み屋がある。看板には「廣島呉藩 脱藩酒亭」とあり、呉の地酒「千福」の酒樽がディスプレイされている。店内に入ると、広島カープの写真や戦前の呉の地図などが貼られ、広島色が濃い。

じつはここ、「千福」が密かにオープンしたアンテナショップなのである。お客さんも広島関係の人が多く、この日もマツダの社員さんグループに遭遇した。しかし20人も入ればいっぱいの店。広島県人であろうとなかろうと、同じ呑兵衛同士。肩を寄せ合って一緒に酒を酌み交わせば、すぐにうち解け、みんな友達になってしまう。

基本は前金制で、混んでくればセルフサービス。隣の人の皿やグラスを片付けたり、ついでに酒を運んだりすることも。なにせマスター一人で切り盛りしている店なのだから、お客さんの協力は不可欠なのだ。

マスターの芳賀さんは、もともと会津の出身。京都で学生時代を過ごし、西へ西へと流れ流れて広島へ。呉で飲食店を営んだ後、「千福」に入社した。「千福」では蔵へ入って酒造りを担当。その証拠に脱藩には、芳賀さんが麹づくりをしている写真が貼ってある。

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「俺は会津藩を脱藩して、広島藩も脱藩して、今は自由の身じゃけん、好きなことをやっとる」と芳賀さんは笑う。料理は芳賀さんの手作りで、素材は広島、とくに呉のものにこだわっている。ビールのつまみに、とたのんだのは「瀬戸内干し海老」350円。口の中でじわーっと凝縮した海老のダシが出て激ウマだ。

ビールのあとは、当然日本酒。本醸造辛口のぬる燗をいただく。この辛口、冷やで良し燗で良しの万能酒で、飲み飽きしない良い酒である。しかもアンテナショップなだけに、1合400円と激安。1合と言ってもあなどるなかれ、上げ底の徳利なんぞでは出てこない。ちろりにガチで1合たっぷり入っているからしっかり酔える。芳賀さんが温度計を見ながらつけてくれた燗酒は、熱すぎずぬるすぎず、ほどよくて旨い。

つまみは呉名物の「がんす」200円。すり身の揚げ物で、ピリ辛の味付け。ビールにも日本酒にも良く合う。あとは宇和島産小魚のすり身の「じゃこ天」200円。こいつも魚の味がしっかりとしていて、酒がすすむ。

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そのほかにも広島といえばこれ!の「小イワシのてんぷら」や、旨味が濃くて歯ごたえ抜群の「瀬戸内のタコ刺し」、広島産の粉と水を取り寄せ、芳賀さんが作った「手作りこんにゃく」、酒の〆に最高の「広島風ミニお好み焼き」などなど、つまみは充実している。

もちろん日本酒も安くて豊富。定番メニューのほか、随時季節限定酒もあり、この日は「夏にごり」がおすすめというので飲んでみた。これがまた全然甘くなくてスイスイ飲め、料理に合わせても邪魔しない良酒であった。

そうこうするうちに、店内のオヤジたちは、1〜2時間でサッと帰って行く。これから腰を落ち着けてじっくり飲みか、あるいはカラオケか? いずれにせよ、ここは新橋の裏道にぽっかりできた異次元空間。安くて旨い酒と肴と気さくなマスターが、今宵も呑兵衛の舌と心を酔わせていいる。

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