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秘酒ラオ・ラーオの悦楽

asia_img02.jpg日本の焼酎の源流はタイにあるといわれているが、私が見たタイの地酒はまさに泡盛に似た米焼酎だった。タイでラオ・カーオ、ラオスでラオ・ラーオと言われるそれは、50度くらいの透明な酒で、冷やしたり水で割ったりせず、ストレートでクイッと飲む。これがまた、メチャ暑い気候と激辛の料理にマッチするのだ。

ともに瓶詰めの市販品もあるが、たいていは密造酒。ラベルのない瓶や、ビニール袋に入っているこれらの酒を、タイでは規制が厳しくみんなビクビクしながら売り買いしていたのに、ラオスではおらかなもんで、白昼堂々道ばたで売っていた。タイにはほかにもちょっと変わった酒がある。ラオ・ヤードンとナム・カーオ、そしてラオ・トゥランだ。

ラオ・ヤードンは、ラオ・カーオに滋養強壮作用のある木の根や皮をつけ込んだ薬酒。きれいなルビー色か黄色で、檜のようないい香りのする飲みやすい酒だ。また、ラオ・カーオの蒸留前のもろみをナム・カーオといい、これも飲みやすい。白く濁っていて、適度な甘みと酸味があり、爽やかな乳酸菌飲料という感じだ。アルコール度数はせいぜい7度くらい。冷やすか、氷を入れて飲むとうまい。

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タイで一番感動した酒がラオ・トゥランである。ラオ・カーオの純度を高めて70度くらいにした酒だ。飲むと一瞬喉にカーッときて、あとからふんわりと甘みと米の香りがするという素晴らしい酒だった。もう昇天ものである。どうやってこんな旨い酒を造っているのか。ぜひ酒造りを見せてほしいと頼んだが、密造酒ゆえにガードは固く、とうとう見ることはできなかった。

酒造りを実際に見ることができたのは、ラオスに入ってからだ。古都ルアン・パバーンの近くにバーン・サンハイという酒造りの村があると聞き、訪ねていった。遭難するかと思うくらいとんでもない山奥で、ガスも電気も水道もないメコン川のほとりで、ドラム缶を改造した蒸留器でラオ・ラーオを造っていた。  かたわらには素焼きの壺がいくつもあり、村の田んぼでとれた米に麹を混ぜて壺に入れておきさえすれば、この蒸し暑い気候が自然に発酵させてくれるらしかった。もちろん水は、メコンの水。まさに地酒の中の地酒である。できたてのなま温かいラオ・ラーオは雑味が多く、まったく洗練されていなかった。が、この山奥で飲むのはやっぱりこんな酒だ! と、苦労して行っただけに感慨ひとしおであった。

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最後につまみの話をしよう。タイの北部にあるランパーンでは、幼虫と昆虫の唐揚げをいただいた。味付けはシンプルに塩のみだ。白い幼虫は、こんがりときつね色に揚がっていて、サクサクと香ばしく美味である。また、昆虫にはコオロギ系とゴキブリ系の二種類があり、どちらも川海老の唐揚げに似てなかなかウマい。一方、ラオスにはソンムーという食べ物がある。塩漬けにした豚肉をバナナの葉で来るんだ姿は笹団子そっくり。これも生ハムっぽくてイケる。

これらをつまみに、照りつける太陽の下、キツーいラオ・ラーオをキューッと一杯! まさに悦楽の極みである。

詳しくは・・・
「女二人東南アジア酔っぱらい旅」光文社知恵の森文庫

1 タイ北部のマーケット。トカゲ、カエルなどが売られている。
2 タイのヤードン・バー。
3 ヤードン・バーで飲み会。
4 ラオ・トゥラン。ビニール袋に入っている。
5 ラオスのバーン・サンハイ。
6 メコン川のほとりでラオ・ラーオを蒸留。
7 壺の中には蒸した米と麹を混ぜたものが入っている。
8 ドラム缶蒸留器の中身はこんな感じ。
9 ただいま蒸留中。
10 ベトナム、ハノイ郊外の村。
11 村で酒造りをするおばあさん。蒸留器は陶器製。
12 麹はもち麹。
13 ベトナムの酒ズオウ・ネップ。
14 酒造りのおばあさんの家で。

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