おりじなる料理 源八
東京都港区新橋3-8-8 TEL03-3431-8091
このお店は、慶応大学卒の友人から「良い店だよ」と紹介されて通うようになった。マスターは三田で20年以上店をやっていて、2年半前新橋に移転してきたという。当然、お客さんには慶応関係者も多い。
学生街の店だった名残か、お料理は安くてボリューム満点。そして店名に「おりじなる料理」と銘打っている通り、オリジナリティにあふれている。メニューを開くと「ただのサラダ・・・でもお代はいただきます」とオヤジギャグも満載。読んでいるだけでも楽しい。
最初の一品は「雷豆腐」だ。揚げ出し豆腐がすまし汁の中に浮かんでいる。汁の具はキノコと三つ葉。そして柚子の良い香りが食欲をそそる。だし汁と一緒に食べる揚げ出し豆腐は最高だ。
せいろに入った「抱きしめ大根」は、鶏とハモのすり身を大根でロールケーキのように巻いて蒸したもの。こいつを黄身酢でいただく。ものすごく上品で、高級料亭の料理のようだ。
「まぐろの叩き揚げ」は、大葉とネギとマグロをたたいて揚げてある。お刺身にしても良いようなマグロを使っているので、揚げすぎないのがポイント。ふわふわなマグロに大葉とネギがアクセントになり、なんとも言えず旨い。
グランドメニュー以外は、奥の黒板に今日のオススメが書いてある。その日を逃すと、二度と食べられないものもあるから要チェックだ。ちなみに今日のオススメは「鯛の酒盗」。普通は酒盗といえば鰹だが、「鯛はもっとあっさりしていて最高だよ!」と、カウンターの中の板さんは言う。
このお店、マスターと女将さんと板さんの3人で切り盛りしている。カウンター8席、奥のテーブル16席、2階の座敷30席。これをたった3人で回しているのだ。しかも、マスター、女将さんともに愛想が良く、忙しくてもお客さんとの会話はとぎれない。カウンターの中で一人フル回転している板さんまで、お客さんの相手をしながら調理している。ここがこの店の本当のすごさなのである。
もうひとつ、メニューを見ると、当たり前の日本酒しか載っていない。が、ここで「これしかないの?」と言うと、待ってましたとばかり、マスターが奥から様々な銘酒を出してきてくれる。年間300種類の酒を仕入れているそうだが、1本買いなので一期一会。今日はどんな酒があるんだろう?という期待と興味で、足繁く通うお客さんもいるとか。マスターの蘊蓄を聞きながら、しばし酒談義。これもまた楽しい。
全国の銘酒を飲みながら、おいしい料理でおなかはいっぱい。そしてあたたかいおもてなしに心も癒され、支払いは?と見ると、毎回3000円前後。「ああ、いい店だった」と心から思える、憩いの名店である。