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中国奥地で飲む!

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中国には55もの少数民族が住んでいる。「彼らがどんな酒を造っているか?」という興味と「ウマい酒が飲みたい!」という情熱だけで、覚えたばかりのあやしげな中国語を駆使し、中国の山奥へと分け入った。
雲南省の北部に、濾*(さんずいに古い)湖という美しい湖がある。そのまわりだけにわずか1万人しか存在しない、モソ族という少数民族がいる。交通不便な隔絶された世界で、今も独自の母系社会を守っている彼らは、また独自の酒をもっていた。それが「蘇理*(王へんに馬)酒(すりまちゅう)」だ。農家の納屋で出会ったその酒は、トロリとして薄黄色くかすかな甘みがあった。原料はトウモロコシ、ベリー、麦、そしてダッタン蕎麦。口当たりは良いが、ワイン程度のアルコール度数があるので気をつけないと酔っぱらう。

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つまみとして出されたのは、塩漬けにした豚の脂身を10年以上熟成したもの。旨味ののったとろけるような脂身は絶品。こいつを食べながら、いろりを囲んで蘇理*酒をぐいぐい飲る。ううむ、ウマい。
広西チワン族自治区へ行くと、さらにいろいろな民族と酒に出会った。広大な棚田が広がる龍勝では、チワン族やヤオ族が、糯米の酒を造っていた。「水酒」というその酒は、白濁していて米が浮いており、微発泡している。甘いが酸味もあるので爽やか。スイスイ飲める酒だ。ごちそうは、竹の中に糯米を詰めて炊いた竹筒飯。米には味がついており、シイタケや豚肉などの具も入っている。眼下に棚田を眺めながら、ホカホカの竹筒飯に水酒。これはこたえられない。
龍勝から貴州省との境まで入って行くと、トン族の村がある。見渡すかぎり青々とした水田の中にいくつもの水車が回り、風雨橋や鼓楼といったトン族独特の建築物が点在する桃源郷である。訪れた時がちょうど中秋節だったので、彼らの祭りに参加することができた。

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祭りの日、村人はこぞって田んぼの中の用水池へ行き、鯉をつかまえる。そして昼食にそれを料理して宴席の一品とするのだ。鯉はなんと刺身にして酢をまぶし、香草や砕いたピーナッツをかけて食べる。これが激ウマなのだ。そして飲む酒は「米酒」。黄色いドロドロのどぶろくで、家の主が造り、祭りのために10年寝かせた特別な酒だ。えもいわれぬコクがあり、旨い。みんな競うように米酒を相手に飲ませ合い、宴は酒が底をつくまで続くのだった。

1 ヤオ族の家で地酒「水酒」を飲む。隣にいるのはこの酒を造った女性。
2 中国酒独特の酒の材料「酒葯」。麹と酵母の働きをする。
3 モソ族の農家で手造りの地酒「蘇理*酒」を飲む。
4 これがモソ族の酒「蘇理*酒」だ。トロリとしてあっさりとした甘みがある。
5 中秋節のごちそう。鶏肉、野菜、鯉などの料理が並ぶ。手前のグラスが地酒の「米酒」。
6 トン族の宴会ではこうして酒をお互いに飲ませ合う。
7 トン族の村で村長さんと酒を酌み交わしながら談笑。
8 モソ族の村の小さな酒蔵。造っているのはトウモロコシの蒸留酒(白酒)だ。
9 羊の丸焼き。濾*湖畔では毎晩バーベキューの屋台が出る。
10 田舎では雑貨店の片隅で地酒が売られている。チワン族の村で。

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