酔っぱライタードットコム - 造り手訪問/れんと

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「れんと」の企画開発室長である渡悦美さんとは、昨年、鹿児島大学焼酎学講座でパネルディスカッションをしたときに知り合った。今回の奄美行きでは、もっとも会いたかった一人だ。取材先の方々が合同で開いてくれた宴会で再会したが、渡さんは、酒席の入口に座り、みんなのためにお酒を作ったり、料理を取ったりと忙しそうであった。私を除いて女性一人なので、給仕役を買って出てくれたのだ。

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宴会では、ターマンというモチモチした芋や、豚バラを煮込んだ豚のトンコツ、タナガ(手長エビ)の唐揚げなど島料理を堪能。とくに、トビンニャという巻き貝と、アオサの天ぷらは激ウマであった。皆さん、「黒糖焼酎は、夏も冬もお湯りだ」と言うので私もお湯割りで。素朴な島料理に、ほんのり甘い黒糖焼酎のお湯割りは、ベストマッチングであった。

専業主婦から黒糖焼酎の杜氏へ

翌日、渡さんの車で、名瀬市内から1時間ほどの宇検村(うけんそん)へ向かった。宇検村は、奄美の中でも不便な場所にある過疎の村である。そこにあえて黒糖焼酎工場を建てたのは、社長のふる里だったからで、宇検村に産業を興し、仕事場を提供したいと考えたからであった。

平成8年に奄美大島開運酒造を立ち上げたときは、誰一人酒の専門家のいない素人集団であった。誰が酒を造るか?という話になったとき、白羽の矢が立ったのが、副社長の奥さんである渡さんだった。

「そのとき私は普通の専業主婦だったし、どうしよう?と悩みました。でも、大学で黒糖の研究をやっていたし、管理栄養士の資格も持っていたので、なにかつながるところはあるかなと、酒造りに飛び込んだのです」と渡さんは言う。

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その後は、鹿児島県工業技術センターで勉強したり、他の黒糖焼酎メーカーの杜氏さんたちに教えてもらったりして、造りを研究。工場の設計から携わり、「れんと」をはじめとする、マイルド系黒糖焼酎を次々と発表していったのだ。

「私の小さい頃は、焼酎を飲んだ翌日のお父さんは、全身の毛穴から臭い匂いがぶわ〜っと出てくるというイメージでした。自分が造るなら、香りが優しく飲みやすい焼酎をつくりたい。ボトルも女性が手に取りやすいデザインにしよう、と思っていました」

そんな渡さんの思いがつまった焼酎が「れんと」なのである。たしかに「れんと」は甘みがあってスッキリとした、飲みやすい黒糖焼酎だ。それゆえ女性を中心に、島内外で厚い支持を得ている。

工場に入ると、大音量のクラシック音楽が聞こえてきた。貯蔵タンクにスピーカーを取り付け、その振動で熟成させる「音響熟成」である。「れんと」は減圧蒸留でマイルドに仕上げるだけでなく、こうして3ヶ月間、音楽を聴かせることで、よりまろやかな焼酎になるのだ。

工場の敷地内には、小さな黒糖工場もあった。ここで宇検産のサトウキビから黒糖を作り、限定販売の焼酎の原料にしている。ひとつは、「Fau」という初留を集めた黒糖焼酎で、グラッパに似た華やかな香りが特徴だ。もうひとつは、「うかれけんむん」という3年寝かせた常圧蒸留の焼酎で、常圧蒸留特有のクセがなく、甘みがあってまろやかであった。

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工場内には樽貯蔵庫があり、常時460本の樫樽が貯蔵されている。こちらは「紅さんご」という40度の焼酎になる。飲んでみると、樽の苦みや渋みがなく、バニラのような甘い香りがして飲みやすい。新商品の「1/fゆらぎ」という20度の焼酎も、樫樽貯蔵の原酒を使っている。これは、きちんと樽由来の香味がありながら、飲みやすくておいしい画期的な味わいとなっていた。

敷地内には、焼酎粕の再処理工場もあった。ここでは、もろみエキスを搾り、黒糖を加え、ミネラル・アミノ酸・ポリフェノールたっぷりの健康飲料を作っている。それが「純美酢(じゅんびす)」で、サッパリとした酸味が特徴のおいしい飲み物だ。サプリメントや健康飲料というのはなかなか続かないものだが、これなら毎日でも飲みたい感じである。

どれを飲んでも、「臭い」「苦い」「クセがある」といったひっかかりがまったくなく、おいしくて飲みやすいことに驚かされた。ボトルデザインやパッケージも、それぞれ凝っていておしゃれだ。

渡さんには、翌日も、海辺やマングローブの林、金作原の原生林などを案内してもらった。時間はどこまでもゆったりと流れ、美しく生命力にあふれた奄美の自然。その中で飲む黒糖焼酎は、東京で飲むより格別においしく感じるのであった。


外観*.jpg株式会社奄美大島開運酒造
創業平成8年 年間製造量13000石
鹿児島県大島郡宇検村湯湾大潟浜2924-2
TEL0997-56-5016
http://www.lento.co.jp/





1居酒屋喜楽 鹿児島県奄美市名瀬金久町4-6 TEL0997-54-1843
2トビンニャ
3音響熟成のタンク
4麹を造る三角棚
5仕込み室
6蒸留器
7樽貯蔵室
8奄美大島開運酒造のお酒
9渡悦美さんとともに
10大浜の海岸
11マングローブの林
12金作原の原生林

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