羽田から直行便で約2時間半。奄美大島は、どこかなつかしい場所である。本土の人間にとって、沖縄まで行くと完全にアウェイな感じであるが、奄美大島にはやすらぎと安心感がある。ちなみに奄美大島の特産品である黒糖焼酎も、泡盛とは違い、芋焼酎や麦焼酎と同じように造られている。
見学コースがあり、試飲販売所も充実
「浜千鳥乃詩」で知られる奄美大島酒造は、空港から名瀬の町へ行く途中にあった。工場を案内してくれるのは、杜氏の竹山茂機さんである。
甘い香りがただよう一角では、黒糖を煮沸溶解していた。原料の黒糖は、芋などと比べてはるかに値段が高い。なかでも奄美産の黒糖は、沖縄や海外の黒糖よりさらに高いので、多くの黒糖焼酎メーカーは沖縄産を使っている。しかし、奄美大島酒造は系列会社で黒糖を作っているため、全量奄美産の黒糖で仕込んでいる。
麹にする米には、タイ米を使う。破砕米ではなく、きれいな丸米だ。回転ドラムで蒸しから麹まで、2日間かけて造る。一次仕込みは麹と酵母を7日間発酵させる。その後、二次仕込みで黒糖を掛け、2週間発酵させて蒸溜となる。
蒸留器は、常圧と減圧の兼用と、常圧の蒸留器があった。常圧の方は、一目でネックを改造したことがわかる。ネックを長くし、冷却しながら蒸溜することで、不純物のない焼酎ができるという。
蒸溜した原酒は10度くらいまで冷却し、濾過をする。ここで、油分が取り除かれる。この油分は、雑味でもあり、旨味成分でもあるので、どのくらい取り除くかは微妙なところ。機械任せにはできない。取り除かれた油分は、白い蝋のように見えた。これは昔、傷薬にしたそうで、黒糖を刈り取るときにできた切り傷によく効いたという。
倉庫には、ホワイトオークの樽が500本あり、高級酒「高倉」の原酒が眠っている。かめ貯蔵の原酒もあり、こちらは日本名門酒会限定の「夢幻」になる。味見させてもらうと、ものすごく甘くて旨かった。
敷地内には試飲販売所があり、焼酎のほか、お土産品も売っている。こちらでいろいろと試飲させてもらった。
黄麹で仕込んだ減圧の「やんご花」は、甘みがあって飲みやすい。さらに甘みがあるのは、こちらも減圧の「JOUGO」。減圧にしては、かなり味のある酒に仕上がっている。スタンダードな「浜千鳥乃詩 30度」は、抜群の安定感だ。樫樽貯蔵した30度の「高倉」は、甘みの中にキリッとしたキレがある。
「浜千鳥乃詩」の原酒(38度)は、ガツンとくる旨さ。一方、「高倉」の原酒(38度)は、骨太な中に甘みがあって素晴らしい。さすがモンドセレクション最高金賞受賞酒である。もっとも秀逸だったのが、「浜千鳥乃詩 ゴールド」。3年以上寝かせた40度の原酒で、まるでコニャックのような味わいなのだ。
試飲販売所の隣はレストランになっており、ここで奄美名物の鶏飯をいただいた。鶏飯とは、蒸し鶏、錦糸卵、椎茸、パパイヤ漬け、紅ショウガなどをご飯の上にトッピングし、鶏スープをかけて食べるお茶漬けのようなもの。島の人たちは、飲んだあとの〆の一品として食べることが多いという。鶏飯にもいろいろ個性があるのだが、ここのはスープにコクがあってなかなか旨い。
奄美大島酒造には見学コースがあり、試飲販売所やレストランも充実しているので、ぜひ立ち寄ることをおすすめしたい。試飲をすれば、きっとお気に入りが見つかるはずだ。奄美産黒糖にこだわった焼酎は、それぞれ主張があり、一本筋が通った酒であった。
奄美大島酒造株式会社
創業昭和45年 年間製造量5000石
鹿児島県大島郡龍郷町浦字角子1864-2
TEL0997-62-3120
http://www.jougo.co.jp
1黒糖の煮沸溶解
2麹を造る回転ドラム
3一次仕込み室
4二次仕込み室と蒸留器
5一次もろみ
6二次もろみ
7蒸留器
8樽貯蔵庫
9試飲販売所
10奄美大島酒造のお酒
11杜氏の竹山茂機さんとともに
12鶏飯